Chiwoniso
今回、2回のインタビューの約束をとって、2回ともすっぽかされていたのだが、やっと3回目の約束がとれ、今日はハラレ郊外のアボンデール・ショッピングセンターにあるイタリアン・カフェでの待ち合わせ。しかし、約束の時間を過ぎても来る気配はなく、半ば諦め気味でムビラを弾いていると「ソーリー…。ソーリー!」と声が聞こえた。ふと見ると舌をペロッと出しながら、申し訳なさそうに、上目遣いに両手を合わせた彼女が立っていた。
■今日もすっぽかされると思っていました(笑)。
■本当に気にしないでください。とりあえず今日は会えたから。
Chowaniso(以下C):ごめんなさい!
本当にごめんなさい…。
■いえ、気にしないでください。慣れています。ここはアフリカ。ポレポレ。ポレポレで(笑)。
C:電話でも話したけど1回目はモザンビークで急遽、ライブが決まって、2回目は娘が熱を出してしまったのよ。でも、本当にごめんなさい。
C:そう…?
■早速ですが、インタビューに移らせていただきます。一昨年、日本に行かれたという噂を聞いたのですが…。
C:えぇ?ヨーロッパや西アフリカにはよくコンサートやツアーで行っているけど、アジアの国々はまだ行ったことがないわ。誰が流したのかしら、そんな噂。
■そうですか。アジアには興味がありますか?
C:そうね。アジアの言語はジンバブエの言語と共通するものがあって興味深いわ。とくに日本は人の名前とかがジンバブエの名前と似てるわね。タナカとか…。
■そうですね。でも「タナカ」は日本では苗字に使われますけど。ジンバブエでは女の子の名前ですよね。
C:煙草吸っていい?
C:名前もそうだけど、人の顔も似てるわね。時々、日本人ツーリストの中にショナ人のような顔の人を見かける事があるわ。
■私も時々、日本人顔のようなジンバブエ人を見かけることがあります。極東とアフリカですが、何か人種の配合が似ている気がしますね。
C:私が子供の頃に所属していた学校ではロシアやヨーロッパ、日本から等の様々な国籍の人たちがいたんだけど、その時に彼らから少し文化的なことや言葉を教えてもらったの。他の国の言葉を発音する時って口の中の舌の感じが変わるでしょ?でも日本語を発音する時って、なぜだか自然なのよ。「コンニチワ」「アリガトウ」なんてね。
■たぶん、言葉のサウンドとその意味をリンクする感覚が似ているんでしょうね。あと、全体を支配する心の中のスピリチュアルな部分が近いような気がします。
C:日本人はスピリッツに対して何を信じているの?
■宗教は仏教が入っていますが、あまり信仰は熱心ではなく、それよりも御先祖を拝むという古来からの伝統があります。ただ、戦後のアメリカ文化の流入で、その形態はかなり変わってきています。
■はい、どうぞ、どうぞ。
C:アメリカ文化はいろいろな国のスピリチュアルな部分をダメにしているところがあるわね。
■そうですね。ところで、日本では毎年、30000人ものの人が自殺をして、亡くなっています。
C:三万人も!?なんで?
■スピリットの問題だと思います。しかし、戦争でもないのにそれだけの人が亡くなっているということは平和ではないような気がします。しかも、その数字に人々は慣れてきていて恐いです。
C:私はアメリカで生まれて、育ったから、アメリカ的なものは私の体の一部でもあるの。でも、ある意味、人道主義的な部分が人々をダメにしていると思うの。テレビのスイッチをつけて要求を満たしても、あの中の90%のことは人々が本当に必要な事ではないわ。とにかく、スピリチュアリティが足りないのよ。私はいろいろな音楽が大好き。ヒップ・ホップ、ブルース、ジャズ、ファンクにレゲエ…。でも、ここ数年はムビラ・ミュージシャンとしての意識を持って音楽をやっているの。なぜなら、この音楽は私達の生きている実感と体を結びつけてくれるから。でも残念ながら、今の人たちはそのレベルの事には触れられ難いと思う。なぜなら、私達は一致した錯覚の中に生きているから。「このようにしなさい。おおっ、これは新しい発見だ!これは最新式だ!これを買え!あれを買え!」と忙しくて、状況が本来の人間の住む世界からは大きくかけ離れているわ。あと、ジンバブエに例に例をとっていうと、キリスト教が言葉という武器を使って、人々のルーツを忘れさせたの。「あなた達は個々の力を持っている」と言ってね。でも、私は彼らのやり方を信じない。いつも神の名前を借りて征服してきた彼らのやり方を・・・。もし、60億の人間がそれぞれ好き勝手な事を言いだしたり、しだしたらどうするの?でも、この世に生きている全ての人は創造力への直感を持っていて、全ての人はそこで繋がっているものなの。
■トランス・ミュージックをご存知ですか?
C:もちろん知っているわ。次のアルバムではハード・トランスをやるつもりなのよ。
■えぇっ!?
C:すごくディープでスピリチュアルなものにする予定。イギリスに住んでいる友人のジンバブエ人が凄くいいDJで、彼との共演になると思うわ。
■でも、ある意味、その次回作を買ってくれた人が今回のアルバムを聞いて、ムビラに興味を持ってくれると面白いです。それはトランスからムビラへの通訳になりますね。
■21世紀はアフリカの時代になると思っています。人々がルーツに戻るというか、これから先、どこに進んで行くべきかのヒントになると思うんです。私は2010年に南アフリカのジョハネスブルグで行なわれるワールド・カップをきっかけとして、何かが起こりそうな気がしています。
C:そうね!国と国どうしの争いではなく、この世界中を支配するシステムに対しての闘いね。
■そうです!今、アフリカが立ちあがる時です。
C:そう!私達は人々に伝えなければ。今はその時だということを。なぜなら、私達は私達の深いところに戻って、私達の力の強さを探し出さないといけない。それが真理であり、真実なのよ。
■ムビラ・ゼナリラのトンデライ・フィリーをご存知ですか?
C:ええ。彼はとってもクール・ガイね。
■将来、日本に彼らを呼んで、トンデのダンスを日本の人達に見せたいです。特に子供達に。自分は自分の中でこんなに自由になれるんだというあのダンスを!
C:私のブリュッセルに住んでDJをやっている友人が前に何回か日本に行ったことがあるのよ。その彼が東京から私にやたら興奮して、電話してきて「ここヤバイよ!君も絶対、来なきゃ!!」ってね。彼曰く、あなたの国は評価した文化をどんどん取り入れるって。そして、様々な文化が混ざり合い、昇華しているって言ってたわ。
■そうですね。一般的に日本人は保守的なわりには伝統的なものには目もくれず、どんどん異文化を吸収していって、新しいもの好きな傾向があります。
C:私がムビラをこの国で弾き始めた頃、人々はなんでそんな古臭いものを使っているんだ?なんでピアノとかやらないんだ?ってよく聞いてきたわ。
■日本でもそうですね。人々は西洋楽器には興味を示すけど、自国の伝統楽器にはあまり興味を示さない。でも、最近の若い人たちは民族楽器を使って独自の音楽をやる人たちが増えてきています。
C:ジンバブエでも前はそうだったけど、最近はラスタの人達を中心にムビラに関心が集まってきてるわ。■ボブ・マーリ−が1980年にジンバブエの独立記念日にライブに来た訳が解かります。彼はショナの人たちが大きなスピリッツを持っていることを知っていたんですね。もし、彼が生きていて、ムビラなんか弾いていたら大変なことになっていたんじゃないでしょうか。
C:でも、彼の意志は引き継がれていると思うわ。
C:ところで、私のマネージャーのファビアンヌはフランス人なんだけど、フランスの大きな自然の中で育っているからスピリッツの話をしても、すごく通じ合うのよ。■私もジンバブエの子供を田舎で育てるという教育はすごく共感できます。
C:そうね、子供を電気や水道のない田舎で育てるというのは非常に意味のある事だわ。水は地下から湧き出て、火は大きな自然の力。そして、そこで育った人は都会に出てきてても、すぐに田舎に戻ろうと思えば戻れる。自然は人間が生きていくのに大事なバランス感覚を養ってくれるのよ。私はテクノロジーもコンピューターも使うし、好きだけど、この文明が私達から自然を切り離す事に関しては賛同できないの。なぜなら、私達の体はプラステックやコンピューターチップからできているのではなく、生きている細胞が一つになったニャマロパ(肉と血)だから。人間は自然を知らないといけない。土の上で寝て、星を見て、空気を吸って、音を聞いて…。
■…ムビラを弾いて、踊るわけですね。靴を脱いで、裸足で土を蹴って!
C:そう!クチカ・パシ!(ショナ語で土を蹴るという意味)
■西アフリカの人たちってパワフルですよね。
C:そうね。特にセネガルの人たちはパワフルだわ。強くて逞しい。
■バカバカバカーン!と太鼓を叩いて、瞬時、スピリットにダイレクト・リンクしちゃいますよね。あれはヤバイです。そのジャンベが日本でも若者を中心に広まっているんですが、わかる様な気がします。
C:あの楽器は凄い。一発で跳んじゃう。あと彼らの踊りと天使のような歌声!手を合わせて、ただ一言「アリガトウ」と言いたい。
■西アフリカでもあなたのアルバムは発売されているのですか?
C:発売はしているけど海賊品が多いわね。人々が個々でコピーする事に関してはいいけど、それを売ったり、店に置いたりするのは許せない。今回、私がZMC(ジンバブエの大手レコード会社)からアルバムをリリースしなかったのは彼らがアーティストの著作権を守ってくれないからなの。だから、今は私自身の手で全部やっているわ。
■印税の額も低いと聞きましたが。
C:十分じゃないし、彼らはお金の事しか考えていない。いつも彼らはお金の計算しかしてない。今の世界はあまりにもお金が支配しすぎているわ。お金は結果的なものであって、目的ではないのよ。それは私の娘にもいつも言い聞かせている事でもあるの。
■たしか、お二人お子さんがいましたよね。
■わかりました。チェックしてみます。ところで、今回のあなたのアルバムについてですが、前回のアルバムはあなたのお母さんに捧げたもので、今回のアルバムはお父さんですよね。もし何かエピソードがあればお話していただきたいのですが。
C:そう。私は6年結婚生活を送っていたわ。私の元夫、知ってる?
■アンディ・ブラウンですよね。
C:そう。今ではいい友達で、たまに会うけど、いまだに大喧嘩するわ。
■彼は白人ですか?
C:彼は父親が白人で、母親が黒人のカラード(混血)なの。白人が作ったこの国のシステムに対して強い反感を持っているわ。でも、いつも怒っていて、たまに「白人も黒人もクソッくらえ〜!」って自分の中の血が喧嘩している。そしてその矛先を私に向けてくるもんだから、トラブルが絶えなかった。だから離婚したの。…でも、彼の怒りが何処から来てたか解かるの。
■そうですか…。ところで私は彼の音楽をまだ聴いたことがないのですが。
C:音楽に関しては最高よ!彼のようなギターを弾く人はアフリカにはいないわ。音楽的にはピンク・フロイドやジミ・ヘンドリックスのようでいて、しっかりとジンバブエの音楽をやっているの。
■どのアルバムがお気に入りですか?
C:そうね。私が参加しているアルバムかな(笑)。でも、一枚挙げるとすれば1998年に発売された「トンゴガラ」。とても美しいアルバムよ。聞いてみて。
C:私の父は60年代後半にジンバブエを離れて、アメリカに旅立った。その時にオリンピアの大学でマリンバやカリンバを教えていた。そして、私の母と結婚する為に母国に帰ってきて、再びアメリカのシアトルに向かったの。そして、彼は人々のアフリカに対する意識を改革しようとした。なぜならその時いろいろな問題が起こっていたから。独立戦争、人間の正義。人々はこれらの問題に対して戦っていた。なぜなら色よ。白色じゃないから。だから、私の父はアフリカ、特にジンバブエについて本当に理解てくれる人々が必要だったの。特に私の母は教育熱心で世界中を飛び回って、世界中に教育施設を建ててまわっていたわ。タイ、インド、ジンバブエ…。私はそういう両親に育てられた事を誇りに思っている。だから、一枚目のアルバムは母に、ニ枚目は父に捧げたの。
■やはり、自分のルーツや育った背景を考える事は大事な事ですね。
C:あと、私の父は人々に大きな視野を与えようとしていた。何か疑問があるのなら、今の現状を維持するのではなく、問題をじっくりと考えて、実際に疑問を投げかけるところから出発しようとしていた。
■それでは、最後に日本のムビラ・ファンにメッセージをお願いします。
C:コンニチワー(笑)。来年あたりに日本にライブで行きたいと思っています。プロモーターの方、ヨロシク!一緒に愛を分かち合いましょう!日本を思いっきり感じてみたいの。あと、自分達の文化に誇りを持って、唯一、自分達しか持っていないものを大事にしてください。みんな頑張って!
■今日はどうもありがとうございました。
C:アリガトー(笑)。
下にある”メッセージボタン”をクリック!
HOME | イベントカレンダー | ムビラとは | アーティスト紹介 | ショップコーナー |
リンク集 | 更新履歴 | 通信販売法に基づく表記 | お問い合わせ |このサイトの著作権はすべてムビラジャンクションに帰属します。掲載の文章、写真、図表、音源等の無断複写、無断転載を禁じます。
Copyright © 2005 Mbira Junction All rights reserved.